インプラント即時荷重とは
【手術したその日から噛める「即時荷重」】
インプラント治療が、1日で完了する方法が開発された。
インプラント治療は、チタン製の人工歯根(インプラント体)を、歯茎の下にある顎骨に埋入し、 しっかりと結合させたうえで上部の歯を人工的に作っていきます。
人工歯根が骨にしっかりと結合すること「オッセオインテグレーション」と言いますが、これは インプラント体を埋め込んでから普通3か月から6か月ほどかかります。
この方法を開発したス ウェーデンのブローネマルク博士は、確実なオッセオインテグレーションのためには、この間は荷重をかけないで安静にしていなければならないとしています。
しかし、コンピュータによる精密なシミュレーションが可能になり、完璧な治療計画と手術方法のマニュアル化が現実的になった現在、たった1日で歯が入り(仮歯)、その日から噛むことができる方法が開発されました。
これが「即時荷重」と呼ばれるインプラント治療です。「荷重」とは重力をかけるということですから、即時荷重というのは「手術後すぐに噛める」という意味です。
「荷重」とは重力をかけるということですから、即時荷重というのは「手術後すぐに噛める」という意味です。
【即時荷重のインプラント治療】
即時荷重インプラントの治療の手順としては、以下のようになります。
問診を行って治療計画を立てます。X線CT検査を行い、その画像データをインプラント分析ソフト(シンプラント、ノーベルガイドなど)で詳細に検討します。
すなわち、インプラントを埋入する部位の骨の幅・高さ・質が即時荷重に適切かどうかを診断します。このように、CT検査と分析ソフトは、即時荷重インプラント治療には必須のものです。
しかし、一歯欠損などの少数歯欠損・抜歯即時インプラント、あるいは臨床上および歯科用の X線検査で明らかに骨の状態が良好なケースでは、CT検査が必要ないこともあります。
手術当日、後で述べるような条件のもとで、計画通りに顎の骨にインプラントを埋入し、アバットメント、上部構造(多くの場合は仮歯)まで取り付けてしまいます。
1~3か月ほど様子を見て、最終的な歯を作製し、取り付けます。 仮歯でも即時荷重が可能ですので、患者さんは手術直後から噛むことができます。
ただし、いくら即時荷重だからといって、仮歯の期間はむちゃな噛み方は禁物です。
食事は普通にできますが、硬い食べ物は避けましょう。硬い食べ物とは、イカ・タコ・アワビ・硬い肉類・ せんべい・パンの硬い部分・タクアンなどです。
【骨が充分に高く幅があり、硬いことが条件】
即時荷重インプラントは、治療期間が長いというインプラントの大きなデメリットを克服する手術方法です。
ただし、即時荷重は誰でも、どこでも行えるわけではありません。患者さん側にも、歯科医院の側にも、さらに使用するインプラントにも条件があります。
まず、患者さん側の条件として、先に述べたように、インプラント体を埋め込む顎骨が高く幅があり、
また、その骨密度も十分で骨が硬くなければなりません。
即時荷重では、インプラント体を埋め込んだ時点で強固に骨にねじ込まれなければならないので、それに耐えられる顎骨であることは絶対条件になるわけです。
したがって、患者さんが即時荷重を望まれても、すぐに「では即時荷重でやりましょう」というわけにはいきません。さまざまな検査の結果を総合的に判断してから決定します。
十分な顎骨ではないのに即時荷重を行ってしまうことは危険ですし、手術のやり直しにもなりかねません。
ですから、患者さんごとに正しい「荷重時期の決定」が行える歯科医院でなければ、即時荷重のインプラント治療を任せるのはやめたほうがいいと言えるでしょう。
検査によって患者さんの骨の状態を正しく正確に把握できることが、歯科医院側の一つの条件となるわけです。
インプラントの荷重時期の決定についての最も信頼できる情報は、埋入トルク値と「共鳴振動周波数の分析」(Resonance Frequency Analysis:RFA)によって得ることができます。
埋入トルク値というのは、インプラントを骨に埋め込んだ時に使用したドリルのエンジンで測定するか、トルクレンチで測定します。埋入トルク値は35~45ニュートン(Ncm)の力で埋入できれば即時荷重が可能となります。
またRFAは、インプラント体の埋入後、どの程度の強さで骨にねじ込まれているのかを「インプラント安定度数(Implant Stability Quotient:ISQ)」と呼ばれる数値に表す検査で、これを分析することによって、埋め込んだインプラントの荷重時期の最終決定を行います。
この装置があれば、2回法などの遅延荷重の治療中や治療後においても、どのくらいのオッセオインテグレーションが得られたのかを客観的なデータとして確認することができます。
このような装置を備えている歯科医院であれば、インプラント治療は安心と言えるでしょう。
ISQ値は1から100までで、数値が高くなるほどインプラントの安定度も高いことになります。ISQ値と荷重時期の目安は、以下の通りです。
【インプラント埋入時のISQ値と治療方法(荷重時期)の決定】
■ ISQ 60以上・・・骨質により即時荷重が可能
■ ISQ 59~50・・・遅延荷重(2回法)を選択
■ ISQ 49~45・・・遅延荷重(2回法)を選択。かつ治療期間の延長
■ ISQ 45未満・・・直径の大きなインプラントか、テーパーのついたインプラントに変更して埋入しなおす
インプラントを顎の骨に埋入手術した後の骨の反応について簡単に述べておきます。
インプラント手術をした直後の状態は、先に述べたように、かなりのトルク値で埋入されていますので、安定度数(ISQ)も最良の状態になっています。
つまり、埋入後初期の段階で最もしっかりしているのが、手術したその日なのです。
骨は生きています。常に吸収と添加をくり返しています。
埋入したインプラントの表面に接触している骨は徐々に吸収され、最もインプラント安定度が下がる(つまりインプラントがゆるんでくる)時期が約3週目から4週目くらいになります。
つまり、この期間に微少動揺を50~150ミクロンの範囲にとどめておくことが、治療を成功に導く基準値であると言われています。
したがって、手術後の仮歯の期間は、先に述べたように、硬い食べ物は避けるべきです。また、歯ぎしり、くいしばりのある患者さんは、充分な注意が必要です。
即時荷重インプラントを成功させるには条件が必要です
1、インプラント手術時の埋入トルク値が35Ncm以上であること(しっかりとした初期固定)
2、骨質が良いこと(あまり軟らかい骨では初期固定が不十分です)
3、術後の微小動揺を100μm以下にすること(噛み合わせの調整、初期の食事の調整、固定など)
4、即時荷重に適したインプラントメーカーとインプラント体(即時荷重に適したインプラントの形状)を選ぶこと(ノーベルバイオケア社が代表ですが、他メーカーでは即時荷重に適したメーカーはあまり多くはありません)
5、術者の高い技術と経験
即時荷重インプラントのメリット
- 手術後すぐに仮の歯が入り、その日から噛めることです
- 仕事上歯が無いと困る方、審美上必要な方には最大のメリットです
- 手術が1回で済みます
即時荷重インプラントのデメリット
- 骨結合(オッセオインテグレーション)が得られる前から負荷をかけるため、インプラントが動いてきて抜けてしまうことがあります
- 食事が即日からできるといっても固いものは噛めません、当医院の食事指導を守っていただくことが重要です
- 仮の歯が壊れることがあります(こわれたら、すぐに来院可能なことが重要です)
- 手術後3〜4週間(骨結合が得られるまで)は食事制限と注意が必要です
メンテナンスと定期検診 / インプラント手術風景

インプラントで治療した部分に限らず、口の中を衛生的に保つ必要があります。
インプラント以外の歯(ご自分の歯)に歯周病がある場合には、インプラントの周囲にも歯周病原菌が移っていきますので厳重に管理することが大事です。
3〜4カ月に1回の定期検査を受けて、インプラントの周りの歯肉の状態、歯(上部構造)の状態、噛み合わせをチェックします。特に、インプラント周囲の粘膜の状態は特に重要です。インプラントを長期に使用していくにはインプラント周囲炎にならないように予防していくことが最も重要なのです。
院長紹介
院長:小澤 俊文


インディアナ大学インプラント科客員講師

日本口腔インプラント学会認証状

ドイツ口腔インプラント学会
インプラントスペシャリスト医

国際口腔インプラント学会認定医

国際口腔インプラント学会指導医

ドイツ口腔インプラント学会認定
インプラントエキスパート医