骨造成術とは
顎骨の状態が不十分な場合の「骨造成術」とは
【インプラント治療のカギを握る「顎の骨」の状態】
失った歯を再建しようとする場合、残された健康な部分に依存することが必要になります。
ブリッジや部分入れ歯の場合には、周囲に残された健康な歯に助けてもらうわけですし、総入れ歯は歯茎で支えるものです。では、インプラントではどうかと言えば、それは顎の骨なのです。
もともと自然の歯も顎の骨に重力を支えてもらっているものですが、 そこに人工歯根を埋め込み、しっかりと固定させるためには、顎の骨のほうにそれなりの「力」がなければなりません。つまり、埋め込むだけのスペースと、それをしっかりと固定させる硬さがなければ、インプラント治療も困難になるわけです(下図参照)。

歯を失ってから長期にわたってブリッジや入れ歯を使用していた患者さんがインプラント治療を求められるケースは多いのですが、抜けた部分の顎骨が吸収されて痩せているために単純なインプラント治療が困難になることが多くなります。
とくに下顎に比べて上顎は、上部に上顎洞(サイナス)があるため、インプラント体を埋め込むための十分な高さが得られないケースが多くあります。
下顎でも、問題がないわけではありません。下顎には、骨内部の奥から途中まで「下顎管」という管(神経と血管)が通っています。
インプラント体のネジは、この下顎管を避けて、最低でも2ミリはあけて埋め込まなければならないので、顎の骨が痩せている患者さんでは、インプラント体を 埋入する十分なスペースが得られなくなります。
このように、インプラント治療は、常に患者さんの骨の状態と深い関連があるわけです。逆に、顎の骨がしっかりとしていればいるほど、即時負荷などの最新治療も行いやすくなります。
インプラント治療で行われる骨造成術

しかし顎の状態が不十分てあっても、インプラント治療が不可能というわけではありません。
顎の骨の足りない部分に、患者さん自身の骨を若干移植するなどの方法で骨を補充し、そのうえで同じようにインプラント治療を行うことができるからです。これが「骨造成術」という手術です。
移植する骨は、次の図のようにいろいろな場所から採取されます。骨移植ではなく、人工的な素材を使うこともあります。口腔内より自家骨を採取する場所 骨移植手術は少量の簡単なものから、大量の大がかりなものまで、いろいろあります。しかし、静脈内鎮静法と局所麻酔の併用により、歯科医院で行える範囲のものです(もちろん行える医院は限られていますが)。
移植した骨がしっかりと固定される期間が必要ですから、治療の完了までは、通常のインプラント治療よりも長くなります。
インターネットのインプラント相談でよく見かけるのが、歯槽骨造成手術のために入院して腸骨移植や脛骨(足の骨)からの骨移植を勧められたというものです。そこまでしてインプラントをした方が良いのか、患者さんとしては大変悩んでおられるようです。
全身の骨を発生学的に見ると、顎の骨は膜性骨と言い、腸骨および脛骨は軟骨性骨です。顎の骨に腸骨や脛骨を移植した場合、発生学的に違う骨を移植することになります。
術後の吸収量を比較すると腸骨は顎の骨より3~4倍の吸収(骨の萎縮が元の移植骨量の30~50%少なくなる)を生じます。
顎の骨に骨を移植する場合は、顎の骨、または顔面骨から骨を採取した方が、術後の移植骨の吸収量も少ないし、骨密度も高いため、より良いのです。さらに入院の必要もなく、1ヶ月もの間松葉杖ということもありません。骨造成手術には、以下のような種類があります。
1、自分の骨を移植する骨造成(自家骨移植)
2、人工骨を移植する骨造成
3、GBR(骨再生誘導法)
4、スプリットクレスト
5、下歯槽神経移動術
6、歯槽骨延長術(仮骨延長術)
審美的なインプラントのための骨造成術

歯科治療では、歯の機能を回復することと同時に、見た目を美しく維持するという、いわゆる「審美的な目的」も重要視されます。
患者さんの顎骨の状態から、通常のインプラント治療が可能であると判断された場合でも、顎骨が痩せているために仕上がりの見た目には不満が残るということもよくあります。
たとえば上顎の前歯の1本をインプラントにする場合、抜けた部分の歯肉や歯槽骨も失われていることが多く、そのまま治療すると歯茎のラインの仕上がりが不自然になります。
インプラントにした部分だけ歯茎が短く、歯だけが長く伸びたようになってしまうのです。笑顔のときに歯茎が見える患者さんでは、気にされることもあります。
最近は、このような審美的な問題を解消するために骨造成術が行われることも多くなってきました。
骨を増やすことに関して、下記も併せてごらんください
◆サイナスリフト(上顎洞底挙上術)
◆GBR(Guided Bone Regeneration)/骨誘導再生法
メンテナンスと定期検診 / インプラント手術風景

インプラントで治療した部分に限らず、口の中を衛生的に保つ必要があります。
インプラント以外の歯(ご自分の歯)に歯周病がある場合には、インプラントの周囲にも歯周病原菌が移っていきますので厳重に管理することが大事です。
3〜4カ月に1回の定期検査を受けて、インプラントの周りの歯肉の状態、歯(上部構造)の状態、噛み合わせをチェックします。特に、インプラント周囲の粘膜の状態は特に重要です。インプラントを長期に使用していくにはインプラント周囲炎にならないように予防していくことが最も重要なのです。
院長紹介
院長:小澤 俊文


インディアナ大学インプラント科客員講師

日本口腔インプラント学会認証状

ドイツ口腔インプラント学会
インプラントスペシャリスト医

国際口腔インプラント学会認定医

国際口腔インプラント学会指導医

ドイツ口腔インプラント学会認定
インプラントエキスパート医