すインプラントの
リスクと
原因の対処法
リスクと
原因の対処法
インプラント治療の成功を妨げるリスクファクター(危険因子)についてご紹介します。リスクファクターにはいくつかの種類があり、大きく分けて全身的なものと、局所的なものに分けられます。
まずは、どのような点がインプラント治療のリスクになるのか、そしてどう対処すればよいのかを知ることが大切です。インプラントのカウンセリングの際にもご説明いたします。一緒に、なにができるかを考えましょう。
全身的リスクファクター
インプラントは外科手術なので、「お口の中に問題ないので手術できる!」というわけにはいきません。全身的な疾患も、手術に大きく影響を与えます。インプラント手術の時はもちろん、術後もリスクであり続け、インプラントの寿命を左右することもあります。
高血圧症
血圧のコントロールをしないままインプラント手術を受けた場合、手術時の不安や緊張により血圧が危険なレベルにまで上昇する恐れがあります。また、インプラント手術によって動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などを併発する恐れがあります。
対処法
血圧をお薬でコントロールするとともに、術中は生体モニターを付けて血圧、脈拍、呼吸、心電図などの管理を行うことが大切です。また、血圧や心拍数の上昇時には、心筋の酸素消費量も上昇するため、安全な手術のために酸素の投与も欠かせません。 当院では手術時のストレスを軽減させるため、静脈内鎮静法を併用することをおすすめしています。
糖尿病
糖尿病によって高血糖になると、細菌をやっつける白血球の働きが悪くなり、細菌に感染する危険性が高まります。また、血管の働きを弱めて血の流れを悪くするため、手術の治りが遅くなり、インプラントと骨の結合を妨げてしまいます。
対処法
安全にインプラント治療を行うためにも、血糖値を下げる必要があります。かかりつけ医が処方するお薬のほか、運動や食事でのコントロールを行います。
すぐに数値が改善されることはありませんが、ヘモグロビンA1cの数値を6台まで落とせるとベストです。一緒に頑張りましょう。
喫煙
煙草に含まれるニコチンの強力な血管収縮作用により血流が悪くなると、インプラントを埋入した部分へ栄養が十分に運ばれず、治療の妨げになります。さらにタバコの一酸化炭素はヘモグロビンと結合しやすいので、余計に患部に酸素が送られにくくなります。
喫煙は傷が治りにくくなるだけでなく、骨とインプラントの結合も妨げる働きがあります。
対処法
インプラントと骨をしっかりと結合させるため、手術の前後は禁煙をしていただきます。
術前3週間前から、術後は骨との結合が確認できるまで禁煙をお願いしています。しかし、喫煙習慣のある方はインプラント周囲炎の発症・悪化を招きやすいため、この機会に禁煙することを推奨しています。
不整脈
心臓は規則正しいリズムで収縮と拡張を繰り返して、全身に血液を巡らせます。不整脈はそのリズムが崩れる症状を指します。不整脈の原因によっては、麻酔に影響を与えたり、手術を受けられない場合があります。
対処法
過去に不整脈を指摘された方は、循環器内科の主治医との連携が必要になります。術後に内服する抗生物質にも注意が必要なため、必ず医師にお伝えください。また、心臓ペースメーカーを入れている方も、手術器具の使用に制限があるため、医師にその旨をお伝えください。
心臓疾患
心臓の筋肉に酸素を供給している動脈が細くなったり、けいれんしたりして心臓に血液不足が生じる狭心症、心筋が冠動脈の閉塞によって壊死する心筋梗塞など、心疾患を起こしたことのある方は、必ず申し出てください。
対処法
内科医との連携が必要になります。まずはかかりつけ医にインプラント治療を希望していることを伝えましょう。また、現在お薬を飲んでいる方、冠動脈バイパス手術等をされている方は、必ずお伝えください。狭心症の場合、過去6ヶ月以内に発作があった場合は手術ができませんのでご了承ください。
心臓ペースメーカー
不整脈などが原因で、心臓の脈拍が遅くなったり、失神発作を起こしたりする方が装着する機器です。心臓を安定して動かすためのもので、電磁波によって動作します。歯科治療に使用される設備・機器によっては、ペースメーカーに危険が及ぶものがあります。
対処法
事前に心臓ペースメーカーを使っていることを、必ずお知らせください。
歯科用電気エンジンや超音波スケーラー、CT装置など、電磁波が発生する機器は使用せずに、診察・治療を進めてまいります。
ガン治療後
口腔ガン、もしくは副鼻腔ガンにおいて、放射線治療を受けた方は、インプラント治療を受けることが難しいです。放射線治療によって骨がダメージを受けてもろくなっており、インプラントの埋入や結合がうまくいきにくいためです。
対処法
基本的に、インプラント治療は難しいです。しかし、治療の線量が低ければ可能なケースもあります。また、当院では抗がん剤の作用促進を期待できる高圧酸素療法(血中の酸素濃度を上げる)を、埋入手術前後に併用します。
局所的リスクファクター
局所的リスクファクターとは、お口の中にある危険因子の事です。全身的リスクファクターと比べると危険度が低いように思われますが、インプラント治療の失敗につながりかねません。必ずインプラント手術前に治療し、改善しましょう。
歯周病・虫歯
インプラントは細菌感染に弱く、感染した場合は天然歯よりも早急に進行しやすいため、せっかく埋入しても脱落する可能性が高まります。歯周病も虫歯も細菌が原因の病気ですが、特に歯周病菌はインプラント周囲炎の原因菌でもあるため、しっかり対策を講じることが大切です。
対処法
歯周病も虫歯も、インプラント手術を受ける前に治療します。 歯周病の状態が安定していれば、インプラントを埋入する医院もあります。しかし、その場合のインプラント寿命は短くなるため、当院では歯周病や虫歯を治してからインプラント治療を開始します。
歯並び・噛み合わせ
歯が抜けたまま放置していると、隣接する歯が倒れたり、飛び出したりします。インプラントや人工歯が入る場所が確保できない場合があり、むりに埋入すれば、さらに歯並びや噛み合わせが乱れてしまいます。
また、悪い噛み合わせはインプラントに大きな負荷をかけるため、人工歯が破折したり、骨吸収によって骨との結合が弱くなったりするリスクがあります。
対処法
インプラント治療を行う前に、歯列矯正や補綴治療で歯並び・噛み合わせを整えます。
歯並びだけでなく、歯ぎしりなどの習慣、顎関節の位置、骨格…お体全体を診たうえで、対応いたします。インプラントを長持ちさせるには、総合的な治療が必要になるのです。
骨量・骨質
インプラント治療は、顎骨に直接人工歯根を埋入するため、骨量や骨質は治療の成否を左右する要因です。骨の高さ・幅などの不足や骨質の悪さは、細菌感染、移植した骨が定着しない、歯茎の見た目が悪いなどのリスクが考えられます。特に前歯は骨が薄いため、インプラントの露出が目立ちやすい部位です。
対処法
骨を増やす骨造成術を行います。インプラント前に行ったり、埋入手術と同時に施術したりと、お口の状態や埋入位置によってタイミングは異なります。
当院では症例に合わせて、GBRと上顎洞底挙上術(サイナスリフト、ソケットリフト)から適切な方法をご提案いたします。
細菌感染
インプラントに限りませんが、外科手術中には細菌感染のリスクが伴います。手術室内の衛生管理だけでなく、口腔内の清掃状態が悪い方や、糖尿病などの全身疾患をお持ちの方、喫煙者といったことも、細菌感染のリスクを高める要素です。
対処法
感染対策を行っている医院を選ぶことが大前提です。当院では、衛生管理と感染対策を徹底した、完全個室の専用オペ室をご用意しています。
また、感染症リスクを高める要素についても、他分野の医師と協力しながら安全なインプラント治療に努めてまいります。